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May 0852015

 口あけて顔のなくなる燕の子

                           大串若竹

は春に渡来して人家とか駅舎とか商店街の軒先とかに巣を作って産卵し育て、秋には南方に去る。その尾は長く二つに別れた、いわゆる燕尾である。人間に寄り添って巣を作るので燕の子にも一段と親しみを覚える。毎日その成長を見上げては楽しんでいるのだが、子は四五匹ほど居るので生存競争も激しそうだ。精一杯口をあけて顔中を口にして、親鳥の餌をねだる。ねだり負ければ成長に負ける事になる。それを見上げる人間も口をいっぱいに飽けて眺める事とはなる。<風鈴の百の音色の一つ選る><甚平やそろばん弾く骨董屋><母の日に母に手品を見せにけり>なども所収される。『風鈴』(2012年)所収。(藤嶋 務)




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